UBERの中国進出
配車アプリは各国で利用され始めているアプリケーションサービス。日本では日本交通タクシーアプリ、インドではOLA、東南アジアではGrab Taxi、ブラジルのEasy Taxi、イギリスのHailoなどがメイン。その中でも中国国内で利用者数が多い快的打車とUBERについて比較した。
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快的打車
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UBER
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時価総額
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160億ドル
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500億ドル
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資金調達額
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40億ドル
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70億ドル
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市場規模
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360都市(2015年末)
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67か国/300都市(2015/5月)
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中国配車市場シェア
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83.2%(北京では90%)
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16.2%(中国21都市/広州が世界No.1)
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特徴
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「滴滴打車」と「快的打車」合併し、2008年サービス開始。主軸をタクシーの配車予約から一般車の配車に移している。
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広州/成都/シンセン/北京の顧客輸送は世界における輸送量ベスト10にランクイン。
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「快的打車」
2008年ローンチ。中国のタクシーには無線設備がなく、タクシーアプリは走りながら次の乗客を確実に確保できるツールである。1台のタクシーには1アプリまで、という規制はあるが、安価なスマホ2台に快的打車と滴滴打車をインストールして商売に励む運転手も多い。アプリでの客待ちは、空車で街を走ってガソリンを浪費するより効率が良いため。
中国のタクシー運転手は、地方政府に認可されたタクシー会社に所属するが、個人タクシー状態である。所属都市や車種によって違いがあるが、タクシーに乗るには3年程度の運転経験を必要とし、試験を受験する必要がある。タクシー会社は運転手に車を貸し、勤務時間は固定、毎月5000元から6000元程度の固定費を会社に納めなければならない。燃料代、故障・事故時の修理代、費用はすべて運転手持ちで、故障修理中に代車はなく、固定費のディスカウントもない。
「UBER」
2009年ローンチ。2013年8月に試験運用を始めた上海は、慢性的なタクシー不足に悩んでいた。UBERは英語非公用国で初めて英語ドライバーを売り込んだ。この戦略が、外国人ビジネスマンと付き合いがあったり、外国暮らしの経験のある中国人を捉えた。当初10〜20%程度だった中国語利用者が急速に拡大し、2カ月のうちに英語話者ユーザー数を抜いた。現在ウーバー中国に登録されている外国籍ドライバーは70万人、うち17万人が上海で車を走らせている。ウーバー中国では2015年10月現在、毎日平均100万件近くの配車要求に対応している。
UBERの中国戦略は、各都市に小さなチームをつくり運用するもの。新しい都市に進出する際には都市のマネージャーとなる人物を募集し、3人によるグループ体制をつくる。半月で加盟車両を探し、そして試験運用に入る。サンフランシスコ本社が結果に満足すれば、運営は現地チームに任される。中国国内での決済方法は、アリババの決済サービス「アリペイ」と提携している。
UBERは、2016年中に「中国中西部や東北部 100ヵ所以上の都市に進出し、300万人以上の大都市をカバーする」とあいている。中国法人UBER CHINAは、現地の検索/地図サービス大手の百度と協力して立ち上げられた。2013年初めには、テンセントでモバイルインターネット事業チームのトップ2を務めていた王暁峰氏を中国CEOとして迎え入れた。
「抜け道」
プロモーションとして、1週間に70件の配車リクエストに応じた運転手にはボーナスとしてUBERから7000元(約14万円)が別途支払われる。一部の運転手たちはこの70件をこなすために、知り合いや家族に配車リクエストをさせる。途中でいったん車を止めてサービスを終了させ、また走るというかたちで1回の移動を2件に分けるといった手法がある。
また、UBERは朝夕の配車ピークタイムに1件の取引につき、乗客乗車料の3.5倍の支払いを約束している。一部の運転手たちは親戚や知り合いをサクラにして乗車させ、それを受け取った後に山分けするという手段を取るという。これらによって、月2、3万元(約40万〜60万円)の収入に変えている運転手もいるとのこと。
「客の取り合い」
中国では客が一気に配車アプリのハイヤーに流れ、各地で混乱が起きている。タクシーのサービスへの不満がもともと強いことが背景にある。
河南省鄭州市で2015年5月下旬、タクシー運転手が配車アプリを使うハイヤーの窓ガラスを割る事件が起きた。運転手仲間によると、タクシーが道端にいた客を見つけて声をかけたところ、「隣のハイヤーに乗るからいいです」と断られ、ハイヤーに対して逆上した。仲間が加勢し、大通りは騒然となった。運転手仲間は「車を壊したのは悪いけど、ずっと空車で走っていて、やっと見つけた客を奪われた気持ちになるのもわかる」と同情する。
タクシー業界では、不公平な競争を強いられているという不満が強い。前述の通り3年の経験と試験をパスする必要がある。おさめる売上額は地域や会社で異なるが、広州では月8千元前後。配車アプリのハイヤーにはそうした営業の条件がなく、多くが自家用車で参入。副業で働く人も少なくない。
「新規参入の障壁」
フランスUBERのトップ2人、CEOとゼネラル・マネージャー2人がパリで違法タクシー営業の容疑で逮捕された。警察は2014年11月からUBERを対象に捜査活動を開始しており、2015年3月にはオフィスが家宅捜索を受けている。逮捕された2人の容疑は2つ。1.違法なタクシー営業。UBERはアメリカ始め多くの国でこの容疑で捜査されている。2.デジタル情報を隠して捜査を妨害した。3月に警察が家宅捜索を行ったときに、あるべき情報の一部が発見できなかったとのこと。
タクシー運転手がUBER営業中止を求めて大規模な抗議行動を起こした。運転手は70台の自動車を襲い、一部をひっくり返して焼いた。UBERはタクシー運転手その他の免許なしで、ドライバーなら誰でも客を乗せて営業できる。多くのタクシー運転手がこれを不正な競争であるとみなし激しく抗議している。2015年12月現在、UBERはブリュッセル、 オランダ、そしてフランスで営業を禁止されている。また、フランス警察はUBERのドライバーを摘発し罰金を課している。(ちなみにその罰金はUBERが肩代わりしている)。最近、UBERは中小都市にも営業を拡大しており、過激な抗議活動のきっかけとなったとされている。
<参考>
中国国際放送局 / マカオ新聞 / ダウ・ジョーンズ
界面新聞 / Analysys International / Weekly Briefing
2008年ローンチ。中国のタクシーには無線設備がなく、タクシーアプリは走りながら次の乗客を確実に確保できるツールである。1台のタクシーには1アプリまで、という規制はあるが、安価なスマホ2台に快的打車と滴滴打車をインストールして商売に励む運転手も多い。アプリでの客待ちは、空車で街を走ってガソリンを浪費するより効率が良いため。
中国のタクシー運転手は、地方政府に認可されたタクシー会社に所属するが、個人タクシー状態である。所属都市や車種によって違いがあるが、タクシーに乗るには3年程度の運転経験を必要とし、試験を受験する必要がある。タクシー会社は運転手に車を貸し、勤務時間は固定、毎月5000元から6000元程度の固定費を会社に納めなければならない。燃料代、故障・事故時の修理代、費用はすべて運転手持ちで、故障修理中に代車はなく、固定費のディスカウントもない。
「UBER」
2009年ローンチ。2013年8月に試験運用を始めた上海は、慢性的なタクシー不足に悩んでいた。UBERは英語非公用国で初めて英語ドライバーを売り込んだ。この戦略が、外国人ビジネスマンと付き合いがあったり、外国暮らしの経験のある中国人を捉えた。当初10〜20%程度だった中国語利用者が急速に拡大し、2カ月のうちに英語話者ユーザー数を抜いた。現在ウーバー中国に登録されている外国籍ドライバーは70万人、うち17万人が上海で車を走らせている。ウーバー中国では2015年10月現在、毎日平均100万件近くの配車要求に対応している。
UBERの中国戦略は、各都市に小さなチームをつくり運用するもの。新しい都市に進出する際には都市のマネージャーとなる人物を募集し、3人によるグループ体制をつくる。半月で加盟車両を探し、そして試験運用に入る。サンフランシスコ本社が結果に満足すれば、運営は現地チームに任される。中国国内での決済方法は、アリババの決済サービス「アリペイ」と提携している。
UBERは、2016年中に「中国中西部や東北部 100ヵ所以上の都市に進出し、300万人以上の大都市をカバーする」とあいている。中国法人UBER CHINAは、現地の検索/地図サービス大手の百度と協力して立ち上げられた。2013年初めには、テンセントでモバイルインターネット事業チームのトップ2を務めていた王暁峰氏を中国CEOとして迎え入れた。
「抜け道」
プロモーションとして、1週間に70件の配車リクエストに応じた運転手にはボーナスとしてUBERから7000元(約14万円)が別途支払われる。一部の運転手たちはこの70件をこなすために、知り合いや家族に配車リクエストをさせる。途中でいったん車を止めてサービスを終了させ、また走るというかたちで1回の移動を2件に分けるといった手法がある。
また、UBERは朝夕の配車ピークタイムに1件の取引につき、乗客乗車料の3.5倍の支払いを約束している。一部の運転手たちは親戚や知り合いをサクラにして乗車させ、それを受け取った後に山分けするという手段を取るという。これらによって、月2、3万元(約40万〜60万円)の収入に変えている運転手もいるとのこと。
「客の取り合い」
中国では客が一気に配車アプリのハイヤーに流れ、各地で混乱が起きている。タクシーのサービスへの不満がもともと強いことが背景にある。
河南省鄭州市で2015年5月下旬、タクシー運転手が配車アプリを使うハイヤーの窓ガラスを割る事件が起きた。運転手仲間によると、タクシーが道端にいた客を見つけて声をかけたところ、「隣のハイヤーに乗るからいいです」と断られ、ハイヤーに対して逆上した。仲間が加勢し、大通りは騒然となった。運転手仲間は「車を壊したのは悪いけど、ずっと空車で走っていて、やっと見つけた客を奪われた気持ちになるのもわかる」と同情する。
タクシー業界では、不公平な競争を強いられているという不満が強い。前述の通り3年の経験と試験をパスする必要がある。おさめる売上額は地域や会社で異なるが、広州では月8千元前後。配車アプリのハイヤーにはそうした営業の条件がなく、多くが自家用車で参入。副業で働く人も少なくない。
「新規参入の障壁」
フランスUBERのトップ2人、CEOとゼネラル・マネージャー2人がパリで違法タクシー営業の容疑で逮捕された。警察は2014年11月からUBERを対象に捜査活動を開始しており、2015年3月にはオフィスが家宅捜索を受けている。逮捕された2人の容疑は2つ。1.違法なタクシー営業。UBERはアメリカ始め多くの国でこの容疑で捜査されている。2.デジタル情報を隠して捜査を妨害した。3月に警察が家宅捜索を行ったときに、あるべき情報の一部が発見できなかったとのこと。
タクシー運転手がUBER営業中止を求めて大規模な抗議行動を起こした。運転手は70台の自動車を襲い、一部をひっくり返して焼いた。UBERはタクシー運転手その他の免許なしで、ドライバーなら誰でも客を乗せて営業できる。多くのタクシー運転手がこれを不正な競争であるとみなし激しく抗議している。2015年12月現在、UBERはブリュッセル、 オランダ、そしてフランスで営業を禁止されている。また、フランス警察はUBERのドライバーを摘発し罰金を課している。(ちなみにその罰金はUBERが肩代わりしている)。最近、UBERは中小都市にも営業を拡大しており、過激な抗議活動のきっかけとなったとされている。
<参考>
中国国際放送局 / マカオ新聞 / ダウ・ジョーンズ
界面新聞 / Analysys International / Weekly Briefing
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